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〘1478㌻〙

第1章

1 ユダの王わうエホヤキムの治世ぢせいの第だい三年ねんにバビロンの王わうネブカデネザル、ヱルサレムにきたりて之これを攻圍󠄃せめかこみしに 2 主しゆユダの王わうヱホヤキムと神かみの家いへの器具󠄄うつはもの幾何いくばくとをかれの手てにわたしたまひければ則すなはちこれをシナルの地ちに携たづさへゆきて己おのれの神かみの家いへにいたりその器具󠄄うつはものを己おのれの神かみの庫くらに藏をさめたり 3 茲こゝに王わう寺人じじんの長かしらアシベナズに命めいじてイスラエルの子孫ひと〴〵の中なかより王わうの血統ちすぢの者ものと貴たふとき族やからたる者もの幾何いくばくを召めし寄よせしむ 4 即すなはち身みに疵きずなく容貌かたち美うるはしくして一切すべての智慧󠄄ちゑの道󠄃みちに頴さとく知識ちしきありて思慮しりよ深ふかく王わうの宮みやに侍はべるに足たる能幹ちからある少わかき者ものを召めし寄よせしめこれにカルデヤ人びとの文󠄃學ぶんがくと言語ことばとを學まなばせんとす 5 是こゝをもて王わうは命めいを下くだして日々ひびに王わうの用もちゐる饌くひものと王わうの飮のむ酒さけとを彼かれらに與あたへしめ三年ねんの間あひだかく彼かれらを養󠄄やしなひ育そだてしめんとす是これその後のちに彼かれらをして王わうの前󠄃まへに立たつことを得えせしめんとてなり 6 是等これらの中なかにユダの人ひとダニエル、ハナニヤ、ミシヤエル、アザリヤありしが 7 寺人じじんの長かしらかれらに名なをあたへてダニエルをベルテシヤザルと名なづけハナニヤをシヤデラクと名なづけミシヤエルをメシヤクと名なづけアザリヤをアベデネゴと名なづく

8 然しかるにダニエルは王わうの用もちゐる饌くひものと王わうの飮のむ酒さけとをもて己おのれの身みを汚けがすまじと心こゝろに思おもひさだめたれば己おのれの身みを汚けがさざらしめんことを寺人じじんの長かしらに求もとむ 9 以前󠄃かねてよりヱホバ、ダニエルをして寺人じじんの長かしらの慈悲なさけと寵愛いつくしみとを蒙かうむらしめたまふ 10 是こゝにおいて寺人じじんの長かしらダニエルに言いひけるは吾わが主しゆなる王わうすでに命めいをくだして汝なんぢらの食󠄃物くひものと汝なんぢらの飮物のみものとを頒󠄃わかたしめたまへば我われかれを畏おそる恐おそらくは彼かれなんぢらの面かほの其その同輩どうはいの少わかき者等ものどもと異ことにして憂うき色いろあるを見みん然しかる時ときは汝なんぢらのために我わが首くび王わうの前󠄃まへに危あやふからん
 1478㌻ 
11 寺人じじんの長かしらはメルザル官くわんをしてダニエル、ハナニヤ、ミシヤエル及およびアザリヤを監督つかさどらせ置おきたればダニエル之これに言いひけるは 12 請󠄃こふ十日とをかの間あひだ僕しもべ等どもを驗ためしたまへ即すなはち我われらには菜󠄄蔬あをものを與あたへて食󠄃くはせ水みづを與あたへて飮のませよ 13 而しかして我われらの面かほと王わうの饌くひものを食󠄃くらふ少者わかきものどもの面かほとを較󠄃くらべ見み汝なんぢの視みるところにしたがひて僕しもべ等どもを待あつかひたまへと

14 是こゝにおいて彼かれこの事ことを聽きゝいれ十日とをかのあひだ彼かれらを驗ためしけるが 15 十日とをかの後のちにいたりて見みるに王わうの饌くひものを食󠄃くらへる諸すべての少者わかきものよりも彼かれらの面かほは美うるはしくまた肥こえ膩あぶらつきてありければ〘1132㌻〙 16 メルザル官くわんすなはち彼かれらの分󠄃ぶんなる饌くひものと彼かれらの飮のむべき酒さけとを撤のぞきさりて菜󠄄蔬あをものをこれに與あたへたり

17 この四人よたりの少者わかきものには神かみ知識ちしきを得えさせ諸すべての文󠄃學ぶんがくと智慧󠄄ちゑに頴さとからしめたまへりダニエはまた能よく各諸もろ〳〵の異象まぼろしと夢兆󠄃ゆめを曉さとる 18 王わうかねて命めいをくだし少者わかきものどもを召めしいるる迄までに經ふべき日ひを定さだめおきしがその日ひ數󠄄かずも過󠄃すぎたるに因よりて寺人じじんの長かしらかれらを引ひきてネブカデザルの前󠄃まへにいたりければ 19 王わうかれらと言談ものいへり彼かれら一切すべての中なかにはダニエル、ハナニヤ、ミシヤエル、アザリヤに比ならぶ者ものあらざりければこの四人よたりは王わうの前󠄃まへに侍はべれり 20 王わうかれらに諸もろ〳〵の事ことを詢とひたづね見みるに彼かれらは智慧󠄄ちゑの學がくにおいてその全󠄃國ぜんこくの博󠄄士はかせと法術󠄃士はふじゆつしに愈󠄃まさること十じふ倍ばいなり 21 ダニエルはクロス王わうの元年ぐわんねんまでありき

第2章

1 ネブカデネザルの治世ぢせいの二年ねんにネブカデネザル夢ゆめを見みそれがために心こゝろに思おもひなやみて復また睡ねむること能あたはざりき 2 是こゝをもて王わうは命めいを下くだし王わうのためにその夢ゆめを解とかせんとて博󠄄士はかせと法術󠄃士はふじゆつしと魔󠄃術󠄃まじゆつ士しとカルデヤ人びととを召めさしめたれば彼かれら來きたりて王わうの前󠄃まへに立たつ 3 王わうすなはち彼かれらにむかひ我われ夢ゆめを見みその夢ゆめの義ぎを知しらんと心こゝろに思おもひなやむと言いひければ
 1479㌻ 
4 カルデヤ人等びとらスリア語ことばをもて王わうに申まうしけるは願ねがはくは王わう長壽いのちながかれ請󠄃こふ僕しもべ等どもにその夢ゆめを語かたりたまへ我われらその解明ときあかしを進󠄃すゝめたてまつらんと 5 王わうこたへてカルデヤ人びとに言いひけるは我われすでに命めいを出いだせり汝等なんぢらもしその夢ゆめとこれが解明ときあかしとを我われに示しめさざるにおいては汝なんぢらの身みは切きり裂さかれ汝なんぢらの家いへは厠かはやにせられん 6 又󠄂また汝なんぢらもしその夢ゆめとこれが解明ときあかしを示しめさば贐物おくりものと賞賚たまものと大おほいなる尊󠄅榮ほまれとを我われより獲えん然さらばその夢ゆめと之これが解明ときあかしを我われに示しめせ 7 彼かれらまた對こたへて言いひけるは願ねがはくは王わう僕しもべどもにその夢ゆめを語かたりたまへ然さらば我われらその解明ときあかしを奏そうすべしと 8 王わうこたへて言いひけるは我われあきらかに知しる汝なんぢらは吾わが命めいの下くだりしを見みるが故ゆゑに時ときを延󠄅のばさんことを望󠄇のぞむなり 9 汝なんぢらもしその夢ゆめを我われに示しめさずば汝なんぢらを處置しよちするの法はふは只たゞ一ひとつのみ汝なんぢらは相あひ語かたらひて虛言いつはりと妄誕󠄅みだりなる詞ことばを我わが前󠄃まへにのべて時ときの變かはるを待またんとするなり汝なんぢら今いま先まづその夢ゆめを我われに示しめせ然さすれば汝なんぢらがその解明ときあかしをも我われにしめし得うることを我われしらんと 10 カルデヤ人等びとらこたへて王わうの前󠄃まへに申まうしけるは世よの中なかには王わうのその事ことを示しめし得うる人ひと一箇ひとりもなし是こゝをもて王わうたる者もの主しゆたる者もの君きみたる者等ものなどの中なかに斯かゝる事ことを博󠄄士はかせまたは法術󠄃士はふじゆつしまたはカルデヤ人びとに問とひたづねし者もの絕たえてあらざるなり 11 王わうの問とひたまふその事ことは甚はなはだ難かたし肉󠄁身にくしんなる者ものと共ともに居をらざる神々かみ〴〵を除のぞきては王わうの前󠄃まへにこれを示しめすことを得うる者もの無なかるべしと〘1133㌻〙 12 斯かゝりしかば王わう怒いかりを發はつし大おほいに憤いきどほりバビロンの智者ちしやをことごとく殺ころせと命めいじたり 13 即すなはち此この命めいくだりければ智者ちしや等どもは殺ころされんとせり又󠄂またダニエルとその同僚ともをも殺ころさんともとめたり

14 茲こゝに王わうの侍衛󠄅じゑいの長かしらアリオク、バビロンの智者ちしや等どもを殺ころさんとて出いできたりければダニエル遠󠄄慮ゑんりよと智慧󠄄ちゑとをもて之これに應答おうたふせり 15 すなはち王わうの高官かうくわんアリオクに對こたへて言いひけるは王わうなにとて斯かくすみやかにこの命めいを下くだしたまひしやとアリオクその事ことをダニエルに吿つげしらせたれば 16 ダニエルいりて王わうに乞こひ求もとめて言いふ暫しばらくの時日ひまを賜たまへ然さらばその解明ときあかしを王わうに奏そうせんと
 1480㌻ 

17 斯かくてダニエルその家いへにかへりその同僚ともハナニヤ、ミシヤエルおよびアザリヤにこの事ことを吿つげしらせ 18 共ともにこの秘密ひみつにつき天てんの神かみの憐憫あはれみを乞こひダニエルとその同僚とも等らをしてその他ほかのバビロンの智者ちしやとともに滅ほろびさらしめんことを求もとめたりしが 19 ダニエルつひに夜よの異象まぼろしの中うちにこの秘密ひみつを示しめされければダニエル天てんの神かみを稱󠄄賛ほめたたふ 20 即すなはちダニエル應こたへて言いひけるは永遠󠄄えいゑんより永遠󠄄えいゑんにいたるまでこの神かみの御名みなは讃ほめまつるべきなり智慧󠄄ちゑと權能ちからはこれが有󠄃ものなればなり 21 彼かれは時ときと期きとを變へんじ王わうを廢はいし王わうを立たて智者ちしやに智慧󠄄ちゑを與あたへ賢者けんしやに知識ちしきを賜たまふ 22 彼かれは深妙しんめう秘密ひみつの事ことを顯あらはし幽暗󠄃くらきにあるところの者ものを知しりたまふまた光明ひかり彼かれの裏うちにあり 23 わが先祖せんぞ等たちの神かみよ汝なんぢは我われに智慧󠄄ちゑと權能ちからを賜たまひ今いまわれらが汝なんぢに乞こひ求もとめたるところの事ことを我われにしめし給たまへば我われ感謝󠄃かんしやして汝なんぢを稱󠄄賛ほめたたふ即すなはち汝なんぢは王わうのかの事ことを我われらに示しめしたまへり 24 是こゝにおいてダニエルは王わうがバビロンの智者ちしや等どもを殺ころすことを命めいじおけるアリオクの許もとにいたり即すなはちいりてこれに言いひけるはバビロンの智者ちしや等どもを殺ころす勿なかれ我われを王わうの前󠄃まへに引ひきいたれよ我われその解明ときあかしを王わうに奏まうし上あぐべしと

25 アリオクすなはちダニエルを引ひきて急󠄃いそぎ王わうの前󠄃まへにいたり王わうにまうしけるは我われユダの俘囚人とらはれびとの中うちに一箇ひとりの人ひとを得えたり是この者ものその解明ときあかしを王わうにまうしあげん 26 王わうこたへてベルテシヤザルと名なづくるダニエルに言いひけるは汝なんぢは我わが見みたる夢ゆめとその解明ときあかしとを我われに知しらすることを得うるやと 27 ダニエルすなはち應こたへて王わうの前󠄃まへに言いひけるは王わうの問とひたまふ秘密ひみつは智者ちしや法術󠄃士はふじゆつし博󠄄士はかせ卜筮師うらなひしなど之これを王わうに奏まうし上あぐることを得えず 28 然されど天てんに一ひとつの神かみありて秘密ひみつをあらはし給たまふ彼かれ後のちの日ひに起󠄃おこらんところの事ことの如何いかなるかをネブカデネザル王わうにしらせたまふなり汝なんぢの夢ゆめ汝なんぢが牀とこにありて想おもひ見みたまひし汝なんぢの腦のう中ちうの異象まぼろしは是これなり〘1134㌻〙 29 王わうよ汝なんぢ牀とこにいりし時とき將來のちの事ことの如何いかんを想おもひまはしたまひしが秘密ひみつを顯あらはす者もの將來のちの事ことの如何いかんを汝なんぢにしめし給たまへり
 1481㌻ 
30 我わがこの示現あらはしを蒙かうむれるは凡すべての生いける者ものにまさりて我われに智慧󠄄ちゑあるに由よるにあらず唯たゞその解明ときあかしを王わうに知しらしむる事ことありて王わうのつひにその心こゝろに想おもひたまひし事ことを知しるにいたり給たまはんがためなり

31 王わうよ汝なんぢは一箇ひとつの巨󠄃おほいなる像󠄃ざうの汝なんぢの前󠄃まへに立たてるを見みたまへり其その像󠄃ざうは大おほきくしてその光輝かがやきは常つねならずその形かたちは畏おそろしくあり 32 其その像󠄃ざうは頭かしらは純金じゆんきん 胸むねと兩りやう腕うでとは銀ぎん 腹はらと腿󠄃もゝとは銅あかがね 33 脛はぎは鐵てつ 脚あしは一分󠄃いちぶは鐵てつ一分󠄃いちぶは泥土つちなり 34 汝なんぢ見みて居ゐたまひしに遂󠄅つひに一箇ひとつの石いし人ひと手でによらずして鑿きられて出いでその像󠄃ざうの鐵てつと泥土つちとの脚あしを擊うちてこれを碎くだけり 35 斯かゝりしかばその鐵てつと泥土つちと銅あかがねと銀ぎんと金きんとは皆みなともに碎くだけて夏なつの禾場うちばの糠ぬかのごとくに成󠄃なり風かぜに吹ふきはらはれて止とゞまるところ無なかりき而しかしてその像󠄃ざうを擊うちたる石いしは大おほいなる山やまとなりて全󠄃地ぜんちに充みてり

36 是これその夢ゆめなり我われらその解明ときあかしを王わうの前󠄃まへに陳のべん 37 王わうよ汝なんぢは諸王しよわうの王わうにいませり即すなはち天てんの神かみ汝なんぢに國くにと權威󠄂いきほひと能力ちからと尊󠄅貴たふときとを賜たまへり 38 また人ひとの子等こども野のの獸畜けものおよび天空󠄃そらの鳥とりは何處いづくにをる者ものにもあれ皆みなこれを汝なんぢの手てに與あたへて汝なんぢにこれをことごとく治をさめしめたまふ汝なんぢはすなはち此この金きんの頭かしらなり 39 汝なんぢの後のちに汝なんぢに劣おとる一ひとつの國くにおこらんまた第だい三に銅あかがねの國くにおこりて全󠄃ぜん世界せかいを治をさめん 40 第だい四の國くには堅かたきこと鐵てつのごとくならん鐵てつは能よく萬よろづの物ものを毀こぼち碎くだくなり 鐵てつの是等これらをことごとく打うち碎くだくがごとく其その國くには毀こぼちかつ碎くだくことをせん 41 汝なんぢその足あしと足あしの趾ゆびを見みたまひしに一分󠄃いちぶは陶人すゑものしの泥土つち一分󠄃いちぶは鐵てつなりければその國くには分󠄃裂わかれたる者ものならん又󠄂また汝なんぢ鐵てつと粘土ねばつちとの混和まじりたるを見みたまひたればその國くには鐵てつのごとく强つよからん 42 その足あしの趾ゆびの一分󠄃いちぶは鐵てつ一分󠄃いちぶは泥土つちなりしごとくその國くには强つよきところもあり脆󠄃もろきところも有󠄃あらん 43 汝なんぢが鐵てつと粘土ねばつちとの混まじりたるを見みたまひしごとく其それ等らは人ひと草ぐさの種子たねと混まじらん然されど鐵てつと泥土つちとの相あひ合がつせざるごとく彼かれと此これと相あひ合がつすること有󠄃あらじ 44 この王等わうたちの日ひに天てんの神かみ一ひとつの國くにを建󠄄たてたまはん是これは何時いつまでも滅ほろぶること無なからん此この國くには他ほかの民たみに歸きせず却かへつてこの諸もろ〳〵の國くにを打うち破やぶりてこれを滅めつせん是これは立たちて永遠󠄄えいゑんにいたらん
 1482㌻ 
45 かの石いしの人ひと手でによらずして山やまより鑿きられて出いで鐵てつと銅あかがねと泥土つちと銀ぎんと金きんとを打うち碎くだきしを汝なんぢが見みたまひしは即すなはちこの事ことなり大おほい御み神かみこの後のちに起󠄃おこらんところの事ことを王わうにしらせたまへるなりその夢ゆめは眞󠄃まことにしてこの解明ときあかしは確たしかなり〘1135㌻〙

46 是こゝにおいてネブカデネザル王わうは俯伏ふしてダニエルを拜はいし禮物そなへものと香かうをこれに献さゝぐることを命めいじたり 47 而しかして王わうこたへてダニエルに言いひけるは汝なんぢがこの秘密ひみつを明あきらかに示しめすことを得えたるを見みれば誠󠄃まことに汝なんぢらの神かみは神かみ等たちの神かみ王等わうたちの主しゆにして能よく秘密ひみつを示しめす者ものなりと 48 かくて王わうはダこエルに高たかき位くらゐを授さづけ種々くさ〴〵の大おほいなる賜物たまものを與あたへてこれをバビロン全󠄃ぜん州しうの總󠄂督そうとくとなしまたバビロンの智者ちしや等どもを統すぶる者ものの首長をさとなせり 49 王わうまたダニエルの願ねがひによりてシヤデラクとメシヤクとアベデネゴを擧あげてバビロン州しうの事務じむをつかさどらしめたりダニエルは王わうの宮みやにをる

第3章

1 茲こゝにネブカデネザル王わう 一箇ひとつの金きんの像󠄃ざうを造󠄃つくれりその高たかさは六十キユビトその橫よこの廣ひろさは六キユビトなりき即すなはちこれをバビロン州しうのドラの平󠄃野ひらのに立たてたり 2 而しかしてネブカデネザル王わうは州しう牧ぼく將軍しやうぐん方伯はうはく刑官けいくわん庫官こくわん法はふ官くわん士師しゝおよび州しう郡ぐんの諸しよ有󠄃司いうしを召集めしあつめそのネブカデネザル王わうの立たてたる像󠄃ざうの吿成󠄃こくせい禮れいに臨のぞましめんとせり 3 是こゝにおいてその州しう牧ぼく將軍しやうぐん方伯はうはく刑官けいくわん庫官こくわん法はふ官くわん士師しゝおよび州しう郡ぐんの諸しよ有󠄃司いうし等らはネブカデネザル王わうの立たてたる像󠄃ざうの吿成󠄃こくせい禮れいに臨のぞみそのネブカデネザル王わうの立たてたる像󠄃ざうの前󠄃まへに立たてり 4 時ときに傳令でんれい者しや大おほ聲ごゑに呼よばはりて言いふ諸民しよみん諸しよ族ぞく諸しよ音󠄃いんよ汝なんぢらは斯かく命めいぜらる 5 汝なんぢら喇叭らつぱ簫せう琵琶びは琴きん瑟しつ篳篥ひちりきなどの諸もろ〳〵の樂器がくきの音󠄃ねを聞きく時ときは俯伏ひれふしネブカデネザル王わうの立たてたまへる金きん像󠄃ざうを拜はいすべし 6 凡すべて俯伏ひれふて拜はいせざる者ものは即時そくじに火ひの燃もゆる爐ろの中なかに投なげこまるべしと 7 是これをもて諸民しよみん等ら喇叭らつぱ簫せう琵琶びは琴きん瑟しつなどの諸もろ〳〵の樂器がくきの音󠄃ねを聞きくや直たゞちに諸民しよみん諸しよ族ぞく諸しよ音󠄃いんみな俯伏ひれふしネブカデネザル王わうの立たてたる金きん像󠄃ざうを拜はいしたり
 1483㌻ 

8 その時とき或あるカルデヤ人等びとら進󠄃すゝみきたりてユダヤ人びとを讒奏ざんそうせり 9 即すなはち彼かれらネブカデネザル王わうに奏聞まうして言いふ願ねがはくは王わう長壽いのちながかれ 10 王わうよ汝なんぢは命めいを出いだして宣のたまへり凡すべて喇叭らつぱ簫せう琵琶びは琴きん瑟しつ篳篥ひちりきなどの諸もろ〳〵の樂器がくきの音󠄃ねを聞きく者ものはみな俯伏ひれふしこの金きん像󠄃ざうを拜はいすべし 11 凡すべて俯伏ひれふし拜はいせざる者ものはみな火ひの燃もゆる爐ろの中なかに投なげこまるべしと 12 此こゝに汝なんぢが立たててバビロン州しうの事務じむを司つかさどらせ給たまへるユダヤ人びとシヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴあり王わうよ此この人々ひと〴〵は汝なんぢを尊󠄅たふとばず汝なんぢの神々かみ〴〵にも事つかへず汝なんぢの立たてたまへる金きん像󠄃ざうをも拜はいせざるなりと

13 是こゝにおいてネブカデネザル怒いかりかつ憤いきどほりてシヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴを召めし寄よせよと命めいじければ即すなはちこの人々ひと〴〵を王わうの前󠄃まへに引ひききたりしに〘1136㌻〙 14 ネブカデネザルかれらに問とひて言いひけるはシヤデラク、メシヤク、アベデネゴよ汝なんぢら我わが神かみに事つかへずまた我わが立たてたる金きん像󠄃ざうを拜はいせざるは是これ故意ことさらにするなるか 15 汝なんぢらもし何いづれの時ときにもあれ喇叭らつぱ簫せう琵琶びは琴きん瑟しつ篳篥ひちりきなどの諸もろ〳〵の樂器がくきの音󠄃ねを聞きく時ときに俯伏ひれふし我わが造󠄃つくれる像󠄃ざうを拜はいすることを爲なさば可よし然されど汝なんぢらもし拜はいすることをせずば即時そくじに火ひの燃もゆる爐ろの中なかに投なげこまるべし何いづれの神かみか能よく汝なんぢらをわが手てより救すくひいだすことをせん 16 シヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴ對こたへて王わうに言いひけるはネブカデネザルよこの事ことにおいては我われら汝なんぢに答こたふるに及およばず 17 もし善よからんには王わうよ我われらの事つかふる我われらの神かみ我われらを救すくふの能ちからあり彼かれその火ひの燃もゆる爐ろの中なかと汝なんぢの手ての中うちより我われらを救すくひいださん 18 假令たとひしからざるも王わうよ知しりたまへ我われらは汝なんぢの神々かみ〴〵に事つかへずまた汝なんぢの立たてたる金きん像󠄃ざうを拜はいせじ

19 是こゝにおいてネブカデネザル怒ど氣きを充みたしシヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴにむかひてその面かほの容かたちを變かへ即すなはち爐ろを常つねに熱あつくするよりも七倍しちばい熱あつくせよと命めいじ 20 またその軍勢ぐんぜいの中なかの力ちから强つよき人々ひと〴〵を喚よびてシヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴを縛󠄃しばりてこれを火ひの燃もゆる爐ろの中なかに投なげこめと命めいじたり
 1484㌻ 
21 是こゝをもて此この人々ひと〴〵はその褲子はかま羽織はおり外套うはぎおよびその他ほかの服󠄃裝きものを着つけたるままにて縛󠄃しばられて火ひの燃もゆる爐ろの中なかに投なげこまれたりしが 22 王わうの命めいはなはだ急󠄃きうにして爐ろは甚はなはだしく熱ねつしゐたれば彼かのシヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴを引ひき抱󠄃かゝへゆける者等ものどもはその火焰くわえんに燒やきころされたり 23 また此このシヤデラク、メシヤク、デベデネゴの三人にんは縛󠄃しばられたるままにて燃もゆる爐ろの中なかに落おちいりぬ

24 時ときにネブカデネザル王わう驚おどろきて急󠄃忙あはただしくたちあがり大臣だいじん等たちに言いふ我われらは三人にんを縛󠄃しばりて火ひの中なかに投なげいれざりしや彼かれら王わうにこたへて言いふ王わうよ然しかりと 25 王わうまた應こたへて言いふ今いま我われ見みるに四人よにんの者もの縲絏なはめ解とけて火ひの中なかに步あゆみをり凡すべて何なにの害󠄅がいをも受うけずまたその第だい四の者ものの容かたちは神かみの子このごとしと 26 ネブカデネザルすなはちその火ひの燃もゆる爐ろの口くちに進󠄃すゝみよりて呼よびて言いふ至高いとたかき神かみの僕しもべシヤデラク、メシヤク、アベデネゴよ汝なんぢら出いできたれと是こゝにおいてシヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴその火ひの中なかより出いできたりしかば 27 州しう牧ぼく將軍しやうぐん方伯はうはくおよび王わうの大臣だいじん等ら集あつまりて比この人々ひと〴〵を見みたり此この人々ひと〴〵の身みは火ひもこれを害󠄅がいする力ちからなかりきまたその頭かしらの髮かみは燒やけずその衣裳きものは傷そこねず火ひの臭氣にほひもこれに付つかざりき〘1137㌻〙

28 ネブカデネザルすなはち宣のべて曰いはくシヤデラク、メシヤク、アベデネゴの神かみは讃ほむべき哉かな彼かれその使󠄃者つかひを遣󠄃おくりて己おのれを賴たのむ僕しもべを救すくへりまた彼かれらは自己おのれの神かみの外ほかには何なにの神かみにも事つかへずまた拜はいせざらんとて王わうの命めいをも用もちひず自己おのれの身みをも捨󠄃すてんとせり 29 然されば我われ今いま命めいを下くだす諸民しよみん諸しよ族ぞく諸しよ音󠄃いんの中うち凡すべてシヤデラク、メシヤクおよびアベダネゴの神かみを詈ののしる者ものあらばその身みは切きり裂さかれその家いへは厠かはやにせられん其そは是かくのごとくに救すくひを施ほどこす神かみ他ほかにあらざればなりと 30 かくて王わうまたシヤデラク、メシヤクおよびアベデネゴの位くらゐをすすめてバビロン州しうにをらしむ

第4章

1 ネブカデネザル王わう全󠄃ぜん世界せかいに住󠄃すめる諸民しよみん諸族しよぞく諸音󠄃しよいんに諭󠄄さとす願ねがはくは大おほいなる平󠄃安へいあん汝なんぢらにあれ 2 至高いとたかき神かみ我われにむかひて徴證しるしと奇蹟ふしぎを行おこなへり我われこれを知しらしむることを善よしと思おもふ
 1485㌻ 
3 嗚呼あゝ大おほいなるかなその徴證しるし嗚呼あゝ盛󠄃さかんなるかなその奇蹟ふしぎその國くには永遠󠄄えいゑんの國くにその權けんは世々よゝ限かぎりなし

4 我われネブカデネザルわが家いへに安然やすらかに居をりわが宮みやに榮さかえ居をれり 5 我われ一ひとつの夢ゆめを見みて之これがために懼おそれ即すなはち床とこにありてその事ことを想おもひめぐらしその我わが腦のう中ちうの異象まぼろしのために心こゝろをなやませり 6 是こゝに於おいて我われ命めいを下くだしバビロンの智者ちしやをことごとく我わが前󠄃まへに召めしよせしめてその夢ゆめの解明ときあかしを我われにしめさせんと爲したれば 7 すなはち博󠄄士はかせ法術󠄃士はふじゆつしカルデヤ人びと卜筮師うらなひし等らきたりしに囚よりて我われその夢ゆめを彼かれらに語かたりけるに彼かれらはその解明ときあかしを我われにしめすことを得えざりき 8 かくて後のちダニエルわが前󠄃まへに來きたれり彼かれの名なは吾わが神かみの名なにしたがひてベルテシヤザルと稱󠄄となへられその裏うちには聖󠄃きよき神かみの靈れいやどれり我われその夢ゆめを彼かれの前󠄃まへに語かたりて曰いひけらく 9 博󠄄士はかせの長かしらベルテシヤザルよ我われしる汝なんぢの裏うちには聖󠄃きよき神かみの靈れいやどれば如何いかなる秘密ひみつも汝なんぢには難かたき事ことなし我わが夢ゆめに見みたるところの事等ことどもを聞ききその解明ときあかしを我われに吿つげよ 10 我わが床とこにありて見みたる吾わが腦のう中ちうの異象まぼろしは是かくのごとし我われ觀みしに地ちの當中ただなかに一ひとつの樹きありてその丈󠄃たけ高たかかりしが 11 その樹き長ちやうじて强固つよくなり天てんに達󠄃たつするほどの高たかさとなりて地ちの極はてまでも見みえわたり 12 その葉はは美うるはしくその菓みは饒さはにして一切すべての者ものその中うちより食󠄃しよくを得えまた野のの獸けものその蔭かげに臥ふし空󠄃そらの鳥とりその枝えだに棲すみ凡すべて血氣けつきある者ものみな是これによりて身みを養󠄄やしなふ 13 我われ床とこにありて得えたる腦のう中ちうの異象まぼろしの中うちに一箇ひとりの警寤けいご者しや一箇ひとりの聖󠄃者せいしやの天てんより下くだるを見みたりしが 14 彼かれ聲こゑ高たかく呼よばはりて斯かくいへり此この樹きを伐きりたふしその枝えだを斫きりはなしその葉はを搖ふりおとしその果みを打うち散ちらし獸けものをしてその下したより逃󠄄にげはしらせ鳥とりをしてその枝えだを飛とびさらしめよ〘1138㌻〙 15 但たゞしその根ねの上うへの斬きり株かぶを地ちに遺󠄃のこしおき鐵くろがねと銅あかがねの索なはをかけて之これを野のの草くさの中なかにあらしめよ是これは天てんよりくだる露つゆに濕ぬれまた地ちの草くさの中うちにて獸けものとその分󠄃ぶんを同おなじうせん 16 又󠄂またその心こゝろは變かはりて人間にんげんの心こゝろのごとくならず獸けものの心こゝろを稟うけて七ななつの時ときを經へん
 1486㌻ 
17 この事ことは警寤けいご者等しゃたちの命めいによりこの事ことは聖󠄃者せいしや等たちの言ことばによる是これ至高者いとたかきもの人間にんげんの國くにを治をさめて自己おのれの意こゝろのままにこれを人ひとに與あたへまた人ひとの中なかの最もつとも賤いやしき者ものをその上うへに立たてたまふといふ事ことを一切すべての者ものに知しらしめんがためなり 18 我われネブカデネザル王わうこの夢ゆめを見みたりベルテシヤザルよ汝なんぢその解明ときあかしを我われに述󠄃のべよ我わが國くにの智者ちしやは執いづれも皆みなその解明ときあかしを我われに示しめすことを得えざりしが汝なんぢは之これを能よくせん其そは汝なんぢの裏うちには聖󠄃きよき神かみの靈れいやどればなりと

19 その時ときダニエル又󠄂またの名なはベルテシヤザルとい者もの暫時しばらくの間あひだ驚おどろき居をり心こゝろに深ふかく懼おそれたれば王わうこれに吿つげて言いへりベルテシヤザルよ汝なんぢこの夢ゆめとその解明ときあかしのために懼おそるるにおよばずとベルテシヤザルすなはち答こたへて言いひけらく我わが主しゆよ願ねがはくはこの夢ゆめ汝なんぢを惡にくむ者ものの上うへにかからん事ことを願ねがはくは此この解明ときあかし汝なんぢの敵てきにのぞまんことを 20 汝なんぢが見みたまひし樹きすなはちその長ちやうじて强つよくなり天てんに達󠄃たつするほどの高たかさとなりて地ちの極はてまでも見みえわたり 21 その葉はは美うるはしくその果みは饒きはにして一切すべての者ものその中うちより食󠄃しよくを得えまたその下したに野のの獸けもの臥ふしその枝えだに空󠄃そらの鳥とり棲すみたる者もの 22 王わうよ是これはすなはち汝なんぢなり汝なんぢは長ちやうじて强つよくなり汝なんぢの勢いきほひは盛󠄃さかんにして天てんにおよび汝なんぢの權けんは地ちの極はてにまでおよべり 23 王わうまた一箇ひとりの警寤けいご者しや一箇ひとりの聖󠄃者せいしやの天てんより下くだりて斯かく言いふを見みたまへり云いはくこの樹きを伐うちたふして之これをそこなへ但たゞし其その根ねの上うへの斬きり株かぶを地ちに遺󠄃のこしおき鐵くろがねと銅あかがねの索なはをかけて之これを野のの草くさの中なかにあらしめよ是これは天てんより下くだる露つゆに濡ぬれ野のの獸けものとその分󠄃ぶんを同おなじうして七ななつの時ときを經へん 24 王わうよその解明ときあかしは是かくの如ごとし是これ即すなはち至高者いとたかきものの命めいにして王わう我わが主しゆに臨のぞまんとする者ものなり 25 即すなはち汝なんぢは逐󠄃おはれて世よの人ひとと離はなれ野のの獸けものとともに居をり牛うしのごとくに草くさを食󠄃くらひ天てんよりくだる露つゆに濡ぬれん是かくの如ごとくにして七ななつの時ときを經へて汝なんぢつひに知しらん至高者いとたかきもの人間にんげんの國くにを治をさめて自己おのれの意こゝろのままに之これを人ひとに與あたへ給たまふと 26 又󠄂また彼かれらその樹きの根ねの上うへの斬きり株かぶを遺󠄃のこしおけと言いひたれば汝なんぢの國くには汝なんぢが天てんは主しゆたりと知しるにいたる時ときまで汝なんぢを離はなれん 27 然されば王わうよ吾わが諫いさめを容いれ義ただしきをおこなひて罪つみを離はなれ貧󠄃者まづしきものを憐あはれみて惡あくを離はなれよ然しからば汝なんぢの平󠄃安へいあんあるひは長ながく續つづかんと
 1487㌻ 

28 この事ことみなネブカデネザル王わうに臨のぞめり 29 十二箇か月󠄃げつを經へて後のち王わうバビロンの王わう宮きうの上うへに步あゆみをり〘1139㌻〙 30 王わうすなはち語かたりて言いふ此この大おほいなるバビロンは我わが大おほいなる力ちからをもて建󠄄たてて京城󠄃けいじやうとなし之これをもてわが威󠄂光ゐくわうを耀󠄃かがやかす者ものならずや 31 その言ことばなほ王わうの口くちにある中うちに天てんより聲こゑ降󠄄くだりて言いふネブカデネザル王わうよ汝なんぢに吿つぐ汝なんぢは國くにの位くらゐを失うしなはん 32 汝なんぢは逐󠄃おはれて世よの人ひとと離はなれ野のの獸けものと共ともに居をり牛うしのごとくに草くさを食󠄃くらはん斯かくの如ごとくにして七ななつの時ときを經へて汝なんぢつひに知しらん至高者いとたかきもの人間にんげんの國くにを治をさめて己おのれの意こゝろのままにこれを人ひとに與あたへたまふと 33 その時とき直たゞちにこの事ことネブカデネザルに臨のぞみ彼かれは逐󠄃おはれて世よの人ひとに離はなれ牛うしのごとくに草くさを食󠄃くらひてその身みは天てんよりくだる露つゆに濡ぬれ終󠄃つひにその髮かみの毛けは鷲わしの羽はねのごとくになりその爪つめは鳥とりの爪つめのごとくになりぬ

34 斯かくてその日ひの滿みちたる後のち我われネブカデネザル目めをあげて天てんを望󠄇のぞみしにわが分󠄃別ふんべつ性せい我われに歸かへりたれば我われ至高者いとたかきものに感謝󠄃かんしやしその永遠󠄄とこしなへに生いける者ものを讃ほめかつ崇あがめたり彼かれの御み宇よは永遠󠄄えいゑんの御み宇よ彼かれの國くには世々よゝかぎり無なし 35 地上ちじやうの居民きよみんは凡すべて無なき者もののごとし天てんの衆群しうぐんにも地ちの居民きよみんにも彼かれはその意こゝろのままに事ことをなしたまふ誰たれも彼かれの手てをおさへて汝なんぢなんぞ然しかするやと言いふことを得うる者ものなし 36 この時ときわが分󠄃別ふんべつ性せいかく我われに歸かへりたりしがわが國くにの榮光えいくわうにつきてはまた我われの尊󠄅嚴たふときと光耀󠄃かがやき我われにかへれり且かつまた大臣だいじん牧伯等ぼくはくら我われに請󠄃こひ求もとめて我われふたゝび國くにの祚くらゐを踐ふみ前󠄃まへよりも著いちじるしく威󠄂光ゐくわうを增ましたり 37 是こゝにおいて我われネブカデネザル今いまは天てんの王わうを讃ほめ頌󠄃たゝへかつ崇あがむ彼かれの作爲わざは凡すべて眞󠄃實まこと彼かれの道󠄃みちは正義ただし自みづから高たかぶる者ものは彼かれ能よくこれを卑ひくくしたまふ
 1488㌻ 

第5章

1 ベルシヤザル王わうその大臣だいじん一千せん人にんのために酒宴しゆえんを設まうけその一千せん人にんの者ものの前󠄃まへに酒さけを飮のみたりしが 2 酒さけの進󠄃すゝむにいたりてベルシヤザルはその父󠄃ちゝネブカデネザルがヱルサレムの宮みやより取とりきたりし金銀きんぎんの器うつはを携たづさへいたれと命めいぜり是これ王わうとその大臣だいじんおよび王わうの妻妾さいせふ等らみな之これをもて酒さけを飮のまんとてなりき 3 是こゝをもてそのヱルサレムなる神かみの宮みやの內院ないゐんより取とりたりし金きんの器うつはを携たづさへいたりければ王わうとその大臣だいじんおよび王わうの妻妾さいせふ等らこれをもて飮のめり 4 すなはち彼かれらは酒さけをのみて金きん銀ぎん銅どう鐵てつ木ぼく石せきなどの神かみを讃ほめたたへたりしが

5 その時ときに人ひとの手ての指ゆびあらはれて燭臺しよくだいと相對あひたひする王わうの宮みやの粉󠄃壁ぬりかべに物もの書かけり王わうその物もの書かける手ての末さきを見みたり 6 是こゝにおいて王わうの愉快たのしげなる顏かほ色いろは變かはりその心こゝろは思おもひなやみて安やすからず腿󠄃もゝの關節󠄄つがひはゆるみ膝ひざはあひ擊うてり〘1140㌻〙 7 王わうすなはち大おほ聲ごゑに呼よばはりて法術󠄃士はふじゆつしカルデヤ人びと卜筮師うらなひし等らを召めしきたらしめ而しかして王わうバビロンの智者ちしや等どもに吿つげて言いふこの文󠄃字もじを讀よみその解明ときあかしを我われに示しめす者ものには紫むらさきの衣ころもを衣きせ頸くびに金こがねの鏈くさりをかけさせて之これを國くにの第だい三の牧伯ぼくはくとなさんと 8 王わうの智者ちしや等どもは皆みなきたりしかどもその文󠄃字もじを讀よむこと能あたはずまたその解明ときあかしを王わうにしめすこと能あたはざりければ 9 ベルシヤザル王わうおほいに思おもひなやみてその顏かほ色いろを失うしなへりその大臣だいじん等らもまた驚おどろき懼おそれたり

10 時ときに大おほ后きさき王わうと大臣だいじん等らの言ことばを聞きゝてその酒宴しゆえんの室しつにいりきたり大おほ后きさきすなはち陳のべて言いふ願ねがはくは王わう長壽いのちながかれ汝なんぢ心こゝろに思おもひなやむ勿なかれまた顏かほ色いろを失うしなふにおよばず 11 汝なんぢの國くにに聖󠄃きよき神かみの靈れいのやどれる一箇ひとりの人ひとあり汝なんぢの父󠄃ちゝの代よに彼かれ聰明そうめい了知れうちおよび神かみの智慧󠄄ちゑのごとき智慧󠄄ちゑあることを顯あらはせり汝なんぢの父󠄃ちゝネブカデネザル王わうすなはち汝なんぢの父󠄃ちゝの王わう彼かれを立たてて博󠄄士はかせ法術󠄃士はふじゆつしカルデヤ人びと卜筮師うらなひし等らの長かしらとなせり 12 彼かれはダニエルといへる者ものなるが王わうこれにベルテシヤザルといふ名なを與あたへたり彼かれは心こゝろの殊勝󠄃すぐれたる者ものにて了知れうちあり知識ちしきありて能よく夢ゆめを解とき隱語いんごを解とき難なん問もんを解とくなり然さればダニエルを召めされよ彼かれその解明ときあかしをしめさんと
 1489㌻ 

13 是こゝにおいてダニエル召めされて王わうの前󠄃まへに至いたりければ王わうダニエルに語かたりて言いふ汝なんぢは吾わが父󠄃ちゝの王わうがユダより曳ひききたりしユダの俘囚人とらはれびとなるそのダニエルなるか 14 我われ聞きくになんぢの裏うちには神かみの靈れいやどりをりて汝なんぢは聰明そうめい了知れうちおよび非ひ凡ぼんの智慧󠄄ちゑありと云いふ 15 我われ智者ちしや法術󠄃士はふじゆつし等らを吾わが前󠄃まへに召めしよせてこの文󠄃字もじを讀よましめその解明ときあかしを我われにしめさせんと爲したれども彼かれらはこの事ことの解明ときあかしを我われにしめすことを得えず 16 我われ聞きくに汝なんぢは能よく物もの事ごとの解明ときあかしをなしかつ難なん問もんを解とくと云いふ然されば汝なんぢもし能よくこの文󠄃字もじを讀よみその解明ときあかしを我われに示しめさば汝なんぢに紫むらさきの衣ころもを衣きせ金こがねの索くさりを汝なんぢの頸くびにかけさせて汝なんぢをこの國くにの第だい三の牧伯ぼくはくとなさんと

17 ダニエルこたへて王わうに言いひけるは汝なんぢの賜物たまものは汝なんぢみづからこれを取とり汝なんぢの饒おくり物ものはこれを他ほかの人ひとに與あたへたまへ然さりながら我われは王わうのためにその文󠄃字もじを讀よみその解明ときあかしをこれに知しらせたてまつらん 18 王わうよ至高いとたかき神かみ汝なんぢの父󠄃ちゝネブカデネザルに國くにと權勢いきほひと榮光さかえと尊󠄅貴たふときを賜たまへり 19 彼かれに權勢いきほひを賜たまひしによりて諸民しよみん諸族しよぞく諸音󠄃しよいんみな彼かれの前󠄃まへに慄おののき畏おそれたり彼かれはその欲ほつする者ものを殺ころしその欲ほつする者ものを活いかしその欲ほつする者ものを上あげその欲ほつする者ものを下くだししなり 20 而しかして彼かれ心こゝろに高たかぶり氣きを剛愎かたくなにして驕おごりしかばその國くにの位くらゐをすべりてその尊󠄅貴たふときを失うしなひ〘1141㌻〙 21 逐󠄃おはれて世よの人ひとと離はなれその心こゝろは獸けもののごとくに成󠄃なりその住󠄃所󠄃すまひは野の馬むまの中なかにあり牛うしのごとくに草くさを食󠄃くらひてその身みは天てんよりの露つゆに濡ぬれたり是かくのごとくにして終󠄃つひに彼かれは至高いとたかき神かみの人間にんげんの國くにを治をさめてその意こゝろのままに人ひとを立たてたまふといふことをしるにいたれり 22 ベルシヤザルよ汝なんぢは彼かれの子こにして此事このことを盡こと〴〵く知しるといへども猶󠄅なほその心こゝろを卑ひくくせず 23 却かへつて天てんの主しゆにむかひて自みづから高たかぶりその家いへの器皿うつはものを汝なんぢの前󠄃まへに持もちきたらしめて汝なんぢと汝なんぢの大臣だいじんと汝なんぢの妻妾さいせふ等たちそれをもて酒さけを飮のみ而しかして汝なんぢは見みることも聞きくことも知しることもあらぬ金きん銀ぎん銅どう鐵てつ木ぼく石せきの神かみを讃ほめ頌󠄃たゝふることを爲なし汝なんぢの生命いのちをその手てに握にぎり汝なんぢの一切すべての道󠄃みちを主つかさどりたまふ神かみを崇あがむることをせず
 1490㌻ 

24 是こゝをもて彼かれの前󠄃まへよりこの手ての末さきいできたりてこの文󠄃字もじを書かけるなり 25 その書かける文󠄃字もじは是かくのごとしメネ、メネ、テケル、ウバルシン 26 その言ことばの解明ときあかしは是かくのごとしメネ(數󠄄かぞへたり)は神かみ汝なんぢの治世ぢせいを數󠄄かぞへてこれをその終󠄃をはりに至いたらせしを謂いふなり 27 テケル(秤はかれり)は汝なんぢが權衡はかりにて秤はかられて汝なんぢの重めの足たらざることの顯あらはれたるを謂いふなり 28 ペレス(分󠄃わかたれたり)は汝なんぢの國くにの分󠄃わかたれてメデアとペルシヤに與あたへらるるを謂いふなり

29 是こゝにおいてベルシヤザル命めいを降󠄄くだしてダニエルに紫むらさきの衣ころもを着きせしめ金こがねの鏈くさりをこれが頸くびにかけさせて彼かれは國くにの第だい三の牧伯ぼくはくなりと布吿ふこくせり

30 カルデヤ人びとの王わうベルシヤザルはその夜よの中うちに殺ころされ 31 メデア人びとダリヨスその國くにを獲えたり此時このときダリヨスは六十二歳さいなりき

第6章

1 ダリヨスはその國くにに百ひやく二十人にんの牧伯ぼくはくを立たつることを善よしとし即すなはちこれを立たてて全󠄃國ぜんこくを治理をさめしめ 2 また彼かれらの上うへに監督かんとく三人にんを立たてたりダニエルはその一人ひとりなりき是これその州しう牧ぼくをして此この三人にんの前󠄃まへにその職しよくを述󠄃のべしめて王わうに損そん失しつの及およぶこと無なからしめんためなりき 3 ダニエルは心こゝろの殊勝󠄃すぐれたる者ものにしてその他ほかの監督かんとくおよび州しう牧ぼく等らに勝󠄃まさりたれば王わうかれを立たてて全󠄃國ぜんこくを治をさめしめんとせり

4 是こゝにおいてその監督かんとくと州しう牧ぼく等ら國事こくじにつきてダエルを訟󠄃うたへふる𨻶ひまを得えんとしたりしが何なにの𨻶ひまをも何なにの咎とがをも見みいだすことを得えざりき其そは彼かれは忠義ちうぎなる者ものにてその身みに何なにの咎とがもなく何なにの過󠄃失あやまちもなかりければなり 5 是こゝにおいてその人々ひと〴〵言いひけるはこのダニエルはその神かみの例典のりについて之これが𨻶ひまを獲うるにあらざればついにこれを訟󠄃うたへるに由よしなしと
 1491㌻ 
6 すなはちその監督かんとくと州しう牧ぼく等ら王わうの許もとに集あつまり來きたりて斯かく王わうに言いへりダリヨス王わうよ願ねがはくは長壽いのちながかれ〘1142㌻〙 7 國くにの監督かんとく將軍しやうぐん州しう牧ぼく牧伯ぼくはく方伯はうはく等らみな相あひ議はかりて王わうに一ひとつの律法おきてを立たて一ひとつの禁令きんれいを定さだめたまはんことを求もとめんとす王わうよその事ことは是かくの如ごとし即すなはち今いまより三十日にちの內うちは唯たゞ汝なんぢにのみ願ねぎ事ごとをなさしめ若もし汝なんぢをおきて神かみまたは人ひとにこれをなす者ものあらば凡すべて獅子しゝの穴󠄄あなに投なげいれんといふ是これなり 8 然されば王わうよねがはくはその禁令きんれいを立たててその詔書せうしよを認󠄃したためメデアとペルシヤの廢すたることなき律法おきてのごとくに之これをして變かはらざらしめたまへと 9 王わうすなはち詔書せうしよをしたためてその禁令きんれいを出いだせり

10 茲こゝにダニエルはその詔書せうしよを認󠄃したためたることを知しりて家いへにかへりけるがその二階かいの窓まどのヱルサレムにむかひて開ひらける處ところにて一日にちに三度みたびづつ膝ひざをかがめて禱いのりその神かみに向むけて感謝󠄃かんしやせり是これその時ときの前󠄃まへよりして斯かくなし居ゐたればなり 11 斯かゝりしかばその人々ひと〴〵馳はせよりてダニエルがその神かみにむかひて禱いのりかつ求もとめをるを見みあらはせり 12 而しかして彼かれら進󠄃すゝみきたり王わうの禁令きんれいの事ことにつきて王わうに奏上まうして言いひけるは王わうよ汝なんぢは禁令きんれいをしたため出いだし今いまより三十日にちの內うちには只たゞなんぢにのみ願事ねぎごとをなさしめ若もし汝なんぢをおきて神かみまたは人ひとにこれをなす者ものあらば凡すべてその者ものを獅子しゝの穴󠄄あなに投なげいれんと定さだめたまへるならずやと王わうこたへて言いふ其その事ことは眞󠄃實まことにしてメデアとペルシヤの律法おきてのごとく廢すつべからざる者ものなり 13 彼かれらまた對こたへて王わうの前󠄃まへに言いひけるは王わうよユダの俘擄とらはれ人ひとなるダニエルは汝なんぢをも汝なんぢの認󠄃みとめ出いだし給たまひし禁令きんれいをも顧󠄃かへりみずして一日にちに三度みたびづつ祈禱いのりをなすなりと 14 王わうこの事ことを聞きゝてこれがために大おほいに愁うれひひダニエルを救すくはんと心こゝろを用もちひ即すなはちこれを拯たすけんと力ちからをつくして日ひの入いる頃ころにおよびければ 15 その人々ひと〴〵また王わうの許もとに集つどひきたりて王わうに言いひけるは王わうよ知しりたまへメデアとペルシヤの律法おきてによれば王わうの立たてたる禁令きんれいまたは法度のりは變かふべからざる者ものなりと
 1492㌻ 

16 是こゝにおいて王わう命めいを下くだしければダニエルを曳ひききたりて獅子しゝの穴󠄄あなに投なげいれたり王わうダニエルに語かたりて言いふ願ねがはくは汝なんぢが恒つねに事つかふる神かみ汝なんぢを救すくはんことをと 17 時ときに石いしを持もちきたりてその穴󠄄あなの口くちを塞ふさぎければ王わうおのれの印いんと大臣だいじん等たちの印いんをもてこれに封ふう印いんをなせり是これダニエルの處置しよちをして變かはることなからしめんためなりき 18 斯かくて後のち王わうはその宮みやにかへりけるがその夜よは食󠄃しよくをなさずまた嬪みめ等たちを召めしよせずして全󠄃まつたく寢ねむることをせざりき

19 而しかして王わうは朝󠄃あさまだきに起󠄃おきいでてその獅子しゝの穴󠄄あなに急󠄃いそぎいたりしが 20 穴󠄄あなにいたりける時とき哀かなしげなる聲こゑをあげてダニエルを呼よべりすなはち王わうダニエルに言いひけるは活いける神かみの僕しもべダニエルよ汝なんぢが恒つねに事つかふる神かみ汝なんぢを救すくふて獅子しゝの害󠄅がいを免まぬかれしむることを得えしや〘1143㌻〙 21 ダニエル王わうにいひけるは願ねがはくは王わう長壽いのちながかれ 22 吾わが神かみその使󠄃つかひをおくりて獅子しゝの口くちを閉とぢさせたまひたれば獅子しゝは我われを害󠄅がいせざりき其そは我われの辜つみなき事ことかれの前󠄃まへに明あきらかなればなり王わうよ我われは汝なんぢにも惡あしき事ことをなさざりしなりと 23 是こゝにおいて王わうおほいに喜よろこびダニエルを穴󠄄あなの中なかより出いだせと命めいじければダニルは穴󠄄あなの中なかより出いだされけるがその身みに何なにの害󠄅がいをも受うけをらざりき是こは彼かれおのれの神かみを賴たのみたるによりてなり

24 かくて王わうまた命めいを下くだしかのダニエルを讒奏ざんそうせし者等ものどもを曳ひききたらせて之これをその妻つま子ことともに獅子しゝの穴󠄄あなに投なげいれしめたるにその穴󠄄あなの底そこにつかざる內うちに獅子しゝはやくも彼かれらを攫つかみてその骨ほねまでもことごとく咬かみ碎くだけり

25 是こゝにおいてダリヨス王わう全󠄃ぜん世界せかいに住󠄃すめる諸民しよみん諸族しよぞく諸音󠄃しよいんに詔書せうしよを頒󠄃わかてり云いはく願ねがはくは大おほいなる平󠄃安やすきなんぢらにあれ 26 今いま我われ詔命みことのりを出いだす我わが國くにの各州かくしうの人ひとみなダニエルの神かみを畏おそれ敬うやまふべし是これは活いける神かみにして永遠󠄄とこしなへに立たつ者ものまたその國くには亡ほろびずその權けんは終󠄃極をはりまで續つづくなり 27 是これは救すくひを施ほどこし拯たすけをなし天てんにおいても地ちにおいても休徴しるしをほどこし奇蹟ふしぎをおこなふ者ものにてすなはちダニエルを救すくひて獅子しゝの力ちからを免まぬかれしめたりと
 1493㌻ 

28 このダニエルはダリヨスの世よとペルシヤ人びとクロスの世よにおいてその身み榮さかえたり

第7章

1 バビロンの王わうベルシヤザルの元年はじめのとしにダニエルその牀とこにありて夢ゆめを見み 腦のう中ちうに異象まぼろしを得えたりしが即すなはちその夢ゆめを記しるしてその事ことの大たい意いを述󠄃のぶ 2 ダニエル述󠄃のべて曰いはく我われ夜よの異象まぼろしの中うちに見みてありしに四方よもの天風あまつかぜ大海おほうみにむかひて烈はげしく吹ふききたり 3 四箇よつの大おほいなる獸けもの海うみより上あがりきたれりその形かたちはおのおの異ことなり 4 第だい一のは獅子しゝの如ごとくにして鷲わしの翼󠄅つばさありけるが我われ見みてをりしに是これはその翼󠄅つばさを拔ぬきとられまた地ちより起󠄃おこされ人ひとのごとく足あしにて立たゝせられ且かつ人ひとの心こゝろを賜たまはれり 5 第だい二の獸けものは熊くまのごとくなりき是これはその體からだの一方いつぽうを擧あげその口くちの齒はの間あひだに三みつの脇わき骨ぼねを啣くはへ居をりけるが之これにむかひて言いへる者ものあり曰いはく起󠄃たちあがりて許多あまたの肉󠄁にくを食󠄃くらへと 6 その後のちに我われ見みしに豹󠄂へうのごとき獸けものいでたりしがその背せには鳥とりの翼󠄅つばさ四よつありこの獸けものはまた四よつの頭かしらありて統すべ轄をさむる權けんをたまはれり 7 我われ夜よの異象まぼろしの中うちに見みしにその後のち第だい四の獸けものいでたりしが是これは畏おそれしく猛たけく大おほいに强つよくして大おほいなる鐵くろがねの齒はあり食󠄃くらひかつ咬かみ碎くだきてその殘餘のこりをば足あしにて踏ふみつけたり是これはその前󠄃さきに出いでたる諸すべての獸けものとは異ことなりてまた十とをの角つのありき〘1144㌻〙 8 我われその角つのを考かんがへ觀みつつありけるにその中なかにまた一箇ひとつの小ちひさき角つの出いできたりしがこの小ちひさき角つののために先さきの角つの三箇みつその根ねより拔ぬけおちたりこの小ちひさき角つのには人ひとの目めのごとき目めありまた大おほいなる事ことを言いふ口くちあり

9 我われ觀みつつありしに遂󠄅つひに寳座くらゐを置おき列ならぶるありて日ひの老おいたる者もの座ざを占しめたりしがその衣ころもは雪󠄃ゆきのごとくに白しろくその髮かみの毛けは漂さらし潔󠄄きよめたる羊ひつじの毛けのごとし又󠄂またその寳座くらゐは火ひの熖ほのほにしてその車輪くるまは燃もゆる火ひなり 10 而しかして彼かれの前󠄃まへより一道󠄃ひとすぢの火ひの流ながれわきいづ彼かれに仕つかふる者ものは千々せん〳〵彼かれの前󠄃まへに侍はべる者ものは萬々まん〳〵審判󠄄さばきすなはち始はじまりて書ふみを開ひらけり 11 その角つのの大おほいなる事ことを言いふ聲こゑによりて我われ觀みつつありけるが我わが見みる間まにその獸けものは終󠄃つひに殺ころされ體からだを壞そこなはれて燃もゆる火ひに投なげいれられたり
 1494㌻ 
12 またその餘ほかの獸けものはその權威󠄂けんゐを奪うばはれたりしがその生命いのちは時ときと期きの至いたるまで延󠄅のばされたり

13 我われまた夜よの異象まぼろしの中うちに觀みてありけるに人ひとの子このごとき者もの雲くもに乘のりて來きたり日ひの老おいたる者ものの許もとに到いたりたればすなはちその前󠄃まへに導󠄃みちびきけるに 14 之これに權けんと榮さかえと國くにとを賜たまひて諸民しよみん諸族しよぞく諸音󠄃しよいんをしてこれに事つかへしむその權けんは永遠󠄄えいゑんの權けんにして移うつりさらず又󠄂またその國くには亡ほろぶることなし

15 是こゝにおいて我われダニエルその體からだの內うちの魂たましひを憂うれへしめわが腦のう中ちうの異象まぼろしのために思おもひなやみたれば 16 すなはち其處そこにたてる者ものの一箇ひとりに就つきてこの一切すべての事ことの眞󠄃意しんいを問とひけるに其その者ものわれにこの事ことの解明ときあかしを吿つげしらせて云いはく 17 この四よつの大おほいなる獸けものは地ちに興おこらんとする四人よたりの王わうなり 18 然されど終󠄃つひには至高者いとたかきものの聖󠄃徒せいと國くにを受うけ長久とこしなへにその國くにを保たもちて世々よゝ限かぎりなからんと 19 是こゝにおいて我われまたその第だい四の獸けものの眞󠄃意しんいを知しらんと欲ほつせり此この獸けものは他ほかの獸けものと異ことなりて至いと畏おそろしくその齒はは鐵くろがねその爪つめは銅あかがねにして食󠄃くらひかつ咬かみ碎くだきてその殘餘のこりを足あしにて踏ふみつけたり 20 此この獸けものの頭かしらには十とをの角つのありしが其その他ほかにまた一ひとつの角つのいできたりしかば之これがために三みつの角つの拔ぬけおちたり此この角つのには目めありまた大おほいなる事ことを言いふ口くちありてその狀かたちはその同類ともがらよりも强つよく見みえたり我われまたこの事ことを知しらんと欲ほつせり 21 我われ觀みつつありけるに此この角つの聖󠄃徒せいとと戰たゝかひてこれに勝󠄃かちたりしが 22 終󠄃つひに日ひの老おいたる者もの來きたりて至高者いとたかきものの聖󠄃徒せいとのために公󠄃義こうぎをおこなへり而しかしてその時ときいたりて聖󠄃徒せいと國くにを獲えたり

23 彼かれかく言いへり第だい四の獸けものは地上ちじやうの第だい四の國くになり是これは一切すべての國くにと異ことなり全󠄃ぜん世界せかいを并呑へいどんしこれを踏ふみつけかつ打うち破やぶらん〘1145㌻〙
 1495㌻ 
24 その十とをの角つのはこの國くにに興おこらんところの十人にんの王わうなり之これが後のちにまた一人ひとり興おこるべし是これは先さきの者ものと異ことなり且かつその王わう三人にんを倒たふすべし 25 かれ至高者いとたかきものに敵てきして言ことを出いだしかつ至高者いとたかきものの聖󠄃徒せいとを惱なやまさん彼かれまた時ときと法おきてとを變かへんことを望󠄇のぞまん聖󠄃徒せいとは一時ひとときと二時ふたときと半󠄃時はんときを經ふるまで彼かれの手てに付わたされてあらん 26 斯かくて後のち審判󠄄さばきはじまり彼かれはその權けんを奪うばはれて終󠄃極をはりまで滅ほろび亡うせん 27 而しかして國くにと權けんと天下あめがしたの國々くに〴〵の勢力ちからとはみな至高者いとたかきものの聖󠄃徒せいとたる民たみに歸きせん至高者いとたかきものの國くには永遠󠄄えいゑんの國くになり諸國しよこくの者ものみな彼かれに事つかへかつ順したがはんと 28 その事こと此こゝにて終󠄃をはれり我われダニエルこれを思おもひまはして大おほいに憂うれへ顏かほ色いろも變かはりぬ我われこの事ことを心こゝろに藏をさむ

第8章

1 我われダニエル前󠄃さきに異象まぼろしを得えたりしが後のちまたベルシヤザルの第だい三年ねんにいたりて異象まぼろしを得えたり 2 我われ異象まぼろしを見みたり我われこれを見みたる時ときに吾わが身みはエラム州しうなるシユシヤンの城󠄃しろにあり我わが異象まぼろしを見みたるはウライ河がはの邊󠄎ほとりにおいてなりき 3 我われ目めを擧あげて觀みしに河かはの上ほとりに一匹󠄃ひとつの牡羊をひつじ立たちをり之これに二ふたつの角つのありてその角つの共ともに長ながかりしが一ひとつの角つのはその他ほかの角つのよりも長ながかりきその長ながき者ものは後あとに長のびたるなり 4 我われ觀みしにその牡羊をひつじ西にし北きた南みなみにむかひて牴觸つきまはりけるが之これに敵あたることを得うる獸けもの一匹󠄃ひとつも無なくまたその手てより救すくひいだすことを得うる者もの絕たえてあらざりき是これはその意こゝろにまかせて事ことをなしその勢威󠄂いきほひはなはだ盛󠄃さかんなりき

5 我われこれを考かんがへ見みつつありけるにて一匹󠄃ひとつの牡山羊をやぎ全󠄃地ぜんちの上うへを飛とびわたりて西にしより來きたりしがその足あしは土つちを履ふまざりきこの牡山羊をやぎは目めの間あひだに著明いちじるしき一ひとつの角つのありき 6 此この者ものさきに我わが河かはの上ほとりに立たてるを見みたる彼かの二ふたつの角つのある牡羊をひつじに向むかひ來きたり熾盛󠄃さかんなる力ちからをもて之これの所󠄃ところに跑かけいたりけるが 7 我われ觀みてあるに牡羊をひつじに近󠄃ちかづくに至いたりて之これにむかひて怒いかりを發おこし牡羊をひつじを擊うちてその二ふたつの角つのを碎くだきたるに牡羊をひつじには之これに敵あたる力ちからなかりければこれを地ちに打うち倒たふして踏ふみつけたり然しかるにその牡羊をひつじをこれが手てより救すくひ得うる者ものあらざりき
 1496㌻ 
8 而しかしてその牡山羊をやぎ甚はなはだ大おほきくなりけるがその盛󠄃さかんなる時ときにあたりてかの大おほいなる角つの折をれその代かはりに四よつの著明いちじるしき角つの生しやうじて天てんの四方しはうに對むかへり

9 またその角つのの一ひとつよりして一ひとつの小ちひさき角つのいできたり南みなみにむかひ東ひがしにむかひ美うるはしき地ちにむかひて甚はなはだ大おほきくなり 10 天てん軍ぐんにおよぶまでに高たかくなりその軍ぐんと星ほし數󠄄箇すうこを地ちに投なげくだしてこれを踏ふみつけ 11 また自みづから高たかぶりてその軍ぐんの主しゆに敵てきしその常供じやうくの物ものを取とりのぞきかつその聖󠄃所󠄃せいじよを毀こぼてり 12 一軍いちぐん罪つみの故ゆゑによりて常供じやうくの物ものとともに棄すてられたり彼者かのものはまた眞󠄃理しんりを地ちに擲なげうち事ことをなしてその意志こころざしを得えたり〘1146㌻〙 13 かくて我われ聞きくに一箇ひとりの聖󠄃者せいしや語ものいひをりしが又󠄂また一箇ひとりの聖󠄃者せいしやありてその語ものいひをる聖󠄃者せいしやにむかひて言いふ常供じやうくの物ものと荒廢あらすことを來きたらする罪つみとにつきて異象まぼろしにあらはれたるところの事こと聖󠄃所󠄃せいじよとその軍ぐんとの棄すてられて踏ふみつけらるる事ことは何時いつまで斯かくてあるべきかと 14 彼かれすなはち我われに言いひけるは二千せん三百びやくの朝󠄃夕あさゆふをかさぬるまで斯かくてあらん而しかして聖󠄃所󠄃せいじよは潔󠄄きよめらるべし

15 我われダニエルこの異象まぼろしを見みてその意義こころを知しらんと求もとめをりける時とき人ひとのごとく見みゆる者ものわが前󠄃まへに立たてり 16 時ときに我われ聞きくにウライ河がはの兩りやう岸がんの間あひだより人ひとの聲こゑ出いでて呼よばはりて言いふガブリエルよこの異象まぼろしをその人ひとに曉さとらしめよと 17 彼かれすなはち我われの立たてる所󠄃ところにきたりしがその到いたれる時ときに我われおそれて仆たふれ伏ふしたるに彼かれわれに言いひけるは人ひとの子こよ曉さとれ此この異象まぼろしは終󠄃をはりの時ときにかかはる者ものなりと 18 彼かれの我われに語ものいひける時とき我われは氣きを喪うしなへる狀さまにて地ちに俯伏ひれふしをりしが彼かれ我われに手てをつけて我われを立たゝせ言いひけるは 19 視みよ我われ忿怒いかりの終󠄃をはりに起󠄃おこらんところの事ことを汝なんぢに知しらせん此事このことは終󠄃末をはりの期きにおよびてあらん 20 汝なんぢが見みたるかの二ふたつの角つのある牡羊をひつじはメデアとペルシヤの王わうなり
 1497㌻ 
21 またかの牡山羊をやぎはギリシヤの王わうその目めの間あひだの大おほいなる角つのはその第だい一の王わうなり 22 またその角つのをれてその代かはりに四よつの角つの生しやうじたればその民たみよりして四よつの國くにおこらん然されど第だい一の者ものの權勢いきほひには及およばざるなり 23 彼かれらの國くにの末すゑにいたり罪人つみびとの罪つみ貫󠄄盈みつるにおよびて一人ひとりの王わうおこらんその顏かほは猛まう惡あくにして巧たくみに詭譎いつはりを言いひ 24 その權勢いきほひは熾盛󠄃さかんならん但たゞし自己おのれの能力ちからをもて之これを致いたすに非あらずその毀滅ほろぼすことを爲なすは常つねならず意志こころざしを得えて事ことを爲なし權能ちからある者等ものどもと聖󠄃きよき民たみとを滅ほろぼさん 25 彼かれは機巧たくみをもて詭譎いつはりをその手てに行おこなひ遂󠄅とげ心こゝろにみづから高たかぶり平󠄃和へいわの時ときに衆多おほくの人ひとを打うち滅ほろぼしまた君きみの君きみたる者ものに敵てきせん然されど終󠄃つひには人ひと手でによらずして滅ほろぼされん 26 前󠄃さきに吿つげたる朝󠄃夕あさゆふの異象まぼろしは眞󠄃實まことなり汝なんぢその異象まぼろしの事ことを秘ひしおけ是これは衆多おほくの日ひの後のちに有󠄃あるべき事ことなり 27 是こゝにおいて我われダニエル疲つかれはてて數󠄄日すうじつの間あひだ病やみわづらひて後のち興おきいでて王わうの事務じむをおこなへり我われはこの異象まぼろしの事ことを案おもひて駭おどろけり人ひともまたこれを曉さとることを得えざりき

第9章

1 メデア人びとアハシユエロスの子こダリヨスがカルデヤ人びとの王わうとせられしその元年はじめのとし 2 すなはちその世よの元年はじめのとしに我われダニエル、ヱホバの言ことばの預言者よげんしやヱレミヤにのぞみて吿つげたるその年としの數󠄄かずを書ふみによりて曉さとれり即すなはちその言ことばにヱルサレムは荒あれて七十年ねんを經へんとあり〘1147㌻〙

3 是こゝにかいて我われ面かほを主しゆヱホバに向むけ斷食󠄃だんじきをなし麻󠄃あさの衣ころもを着き灰󠄃はひを蒙かむり祈いのりかつ願ねがひて求もとむることをせり 4 即すなはち我われわが神かみヱホバに禱いのり懺悔ざんげして言いへり嗚呼あゝ大おほいにして畏おそるべき神かみなる主しゆ自己おのれを愛あいし自己おのれの誡命いましめを守まもる者もののために契󠄅約けいやくを保たもち之これに恩惠めぐみを施ほどこしたまふ者ものよ 5 我等われらは罪つみを犯をかし悖もとれる事ことを爲なし惡あくを行おこなひ叛󠄃逆󠄃そむくことを爲なして汝なんぢの誡命いましめと律法おきてを離はなれたり
 1498㌻ 
6 我等われらはまた汝なんぢの僕しもべなる預言者よげんしや等たちが汝なんぢの名なをもて我われらの王等わうたち君等きみたち先祖せんぞ等たちおよび全󠄃國ぜんこくの民たみに吿つげたる所󠄃ところに聽きゝしたがはざりしなり 7 主しゆよ公󠄃義ただしきは汝なんぢに歸きし羞辱はぢは我われらに歸きせりその狀さま今日こんにちのごとし即すなはちユダの人々ひと〴〵ヱルサレムの居民きよみんおよびイスラエルの全󠄃家ぜんかの者ものは近󠄃ちかき者ものも遠󠄄とほき者ものも皆みな汝なんぢの逐󠄃おひやりたまひし諸もろ〳〵の國々くに〴〵にて羞辱はぢを蒙かうむれり是こは彼かれらが汝なんぢに背そむきて獲えたる罪つみによりて然しかるなり 8 主しゆよ羞辱はぢは我儕われらに歸きし我われらの王等わうたち君等きみたちおよび先祖せんぞ等たちに歸きす是こは我儕われらなんぢに向むかひて罪つみを犯をかしたればなり 9 憐憫あはれみと赦宥ゆるしは主しゆたる我われらの神かみの裏うちにあり其そは我われらこれに叛󠄃そむきたればなり 10 我われらはまた我われらの神かみヱホバの言ことばに遵󠄅したがはずヱホバがその僕しもべなる預言者よげんしや等たちによりて我われらの前󠄃まへに設まうけたまひし律法おきてを行おこなはざりしなり 11 抑そも〳〵イスラエルの人ひとは皆みな汝なんぢの律法おきてを犯をかし離はなれさりて汝なんぢの言ことばに遵󠄅したがはざりき是こゝをもて神かみの僕しもべモーセの律法おきてに記しるしたる呪詛のろひと誓詞ちかひ我われらの上うへに斟そゝぎかかれり是こは我われらこれに罪つみを獲えたればなり 12 即すなはち神かみは大おほいなる災害󠄅わざはひを我われらに蒙かうむらせたまひてその前󠄃さきに我われらと我われらを鞫さばける士師さばきびととにむかひて宣のたまひし言ことばを行おこなひとげたまへりかのエルサレムに臨のぞみたる事ことの如ごときは普天ふてんの下したに未いまだ曾かつて有󠄃あらざりしなり 13 モーセの律法おきてに記しるしたる如ごとくにこの災害󠄅わざはひすべて我われらに臨のぞみしかども我われらはその神かみヱホバの面かほを和なごめんとも爲せずその惡あくを離はなれて汝なんぢの眞󠄃理しんりを曉さとらんとも爲せざりき 14 是こゝをもてヱホバ心こゝろにかけて災害󠄅わざはひを我われらに降󠄄くだしたまへり我われらの神かみヱホバは何事なにごとをなしたまふも凡すべて公󠄃義ただしくいますなり然しかるに我われらはその言ことばに遵󠄅したがはざりき 15 主しゆたる我われらの神かみよ汝なんぢは强つよき手てをもて汝なんぢの民たみをエジプトの地ちより導󠄃みちびき出いだして今日こんにちのごとく汝なんぢの名なを揚あげたまふ我われらは罪つみを犯をかし惡あしき事ことを行おこなへり 16 主しゆよ願ねがはくは汝なんぢが是これまで公󠄃義ただしき御み行爲わざを爲なしたまひし如ごとく汝なんぢの邑まちヱルサレム汝なんぢの聖󠄃山きよきやまより汝なんぢの忿怒いかりと憤恨いきどほりを取とり離はなし給たまへ其そは我われらの罪つみと我われらの先祖せんぞの惡あくのためにヱルサレムと汝なんぢの民たみは我われらの周󠄃圍󠄃まはりの者ものの笑柄ものわらひとなりたればなり
 1499㌻ 
17 然されば我われらの神かみよ僕しもべの禱いのりと願ねがひを聽きゝたまへ汝なんぢは主しゆにいませばかの荒あれをる汝なんぢの聖󠄃所󠄃きよきところに汝なんぢの面かほを耀󠄃かがやかせたまへ〘1148㌻〙 18 我わが神かみよ耳みゝを傾かたむけて聽きゝたまへ目めを啓󠄃ひらきて我われらの荒蕪あれたる狀さまを觀み汝なんぢの名なをもて稱󠄄となへらるる邑まちを觀みたまへ我われらが汝なんぢの前󠄃まへに祈禱いのりをたてまつるは自己おのれの公󠄃義ただしきによるに非あらず唯たゞなんぢの大おほいなる憐憫あはれみによるなり 19 主しゆよ聽きゝいれたまへ主しゆよ赦ゆるしたまへ主しゆよ聽きゝいれて行おこなひたまへこの事ことを遲󠄃おそくしたまふなかれわが神かみよ汝なんぢみづからのために之これをなしたまへ其そは汝なんぢの邑まちと汝なんぢの民たみは汝なんぢの名なをもて稱󠄄となへらるればなり

20 我われかく言いひて祈いのりかつわが罪つみとわが民たみイスラエルの罪つみを懺悔ざんげし我わが神かみの聖󠄃山きよきやまの事ことにつきてわが神かみヱホバのまへに願ねがひをたてまつりをる時とき 21 即すなはち我われ祈禱いのりの言ことばをのべをる時とき我わが初はじめに異象まぼろしの中うちに見みたるかの人ひとガブリエル迅󠄄速󠄃すみやかに飛とびて晩ばんの祭物そなへものを献さゝぐる頃ころ我わが許もとに達󠄃たつし 22 我われに吿つげ我われに語かたりて言いひけるはダニエルよ今いま我われなんぢを敎をしへて了解さとりを得えせしめんとて出いできたれり 23 汝なんぢが祈禱いのりを始はじむるに方あたりて我われ言ことばを受うけたれば之これを汝なんぢに示しめさんとて來きたれり汝なんぢは大おほいに愛あいせらるる者ものなり此この言ことばを了さとりその現あらはれたる事ことの義ぎを曉さとれ

24 汝なんぢの民たみと汝なんぢの聖󠄃きよき邑まちのために七十週󠄃しゆうを定さだめおかる而しかして惡あくを抑おさへ罪つみを封ふうじ愆とがを贖あがなひ永遠󠄄えいゑんの義ぎを携たづさへ入いり異象まぼろしと預言よげんを封ふうじ至聖󠄃者いとたかきものに膏あぶらを灌そゝがん 25 汝なんぢ曉さとり知しるべしヱルサレムを建󠄄たてなほせといふ命令めいれいの出いづるよりメシヤたる君きみの起󠄃おこるまでに七週󠄃しゆうと六十二週󠄃しゆうありその街ちまたと石垣いしがきとは擾亂ぜうらんの間あひだに建󠄄たてなほされん 26 その六十二週󠄃しゆうの後のちにメシヤ絕たゝれん但たゞし是これは自己おのれのために非あらざるなりまた一人ひとりの君きみの民たみきたりて邑まちと聖󠄃所󠄃きよきところとを毀こぼたんその終󠄃をはりは洪水こうずゐに由よれる如ごとくなるべし戰爭たたかひの終󠄃をはるまでに荒蕪あるることすでに極きはまる
 1500㌻ 
27 彼かれ一週󠄃しゆうの間あひだ衆多おほくの者ものと固かたく契󠄅約けいやくを結むすばん而しかして彼かれその週󠄃しゆうの半󠄃なかばに犧牲いけにへと供物そなへものを廢はいせんまた殘暴あらす可惡にくむべき者もの羽翼󠄅つばさの上うへに立たたん斯かくてつひにその定さだまれる災害󠄅わざはひ殘暴あらさるる者ものの上うへに斟そゝぎくだらん

第10章

1 ペルシヤの王わうクロスの三年ねんにベルテシヤザルといふダニエル一ひとつの事ことの默旨もくしを得えたるがその事ことは眞󠄃實まことにしてその戰爭たたかひは大おほいなり彼かれその事ことを曉さとりその示現じげんの義ぎを曉さとれり 2 當その時とき我われダニエル三み七日なぬかの間あひだ哀かなしめり 3 即すなはち三み七日なぬかの全󠄃まつたく滿みつるまでは旨うまき物ものを食󠄃くはず肉󠄁にくと酒さけとを口くちにいれずまた身みに膏油あぶらを抹ぬらざりき 4 正月󠄃しやうぐわつの二十四日かに我われヒデケルといふ大河おほかはの邊󠄎ほとりに在あり 5 目めを擧あげて望󠄇のぞみ觀みしに一箇ひとりの人ひとありて布ぬのの衣ころもを衣きウバズの金きんの帶おびを腰󠄃こしにしめをり 6 その體からだは黃金こがね色いろの玉たまのごとくその面かほは電光いなびかりの如ごとくその目めは火ひの熖ほのほのごとくその手てとその足あしの色いろは磨󠄃みがける銅あかがねのごとくその言ものいふ聲こゑは群衆ぐんしうの聲こゑの如ごとし〘1149㌻〙 7 この示現じげんは唯たゞ我われダニエル一人ひとりこれを觀みたり我われと偕ともなる人々ひと〴〵はこの示現じげんを見みざりしが何なにとなくその身み大おほいに慄をののきて逃󠄄にげかくれたり 8 故ゆゑに我われひとり遺󠄃のこりたるがこの大おほいなる示現じげんを觀みるにおよびて力ちからぬけさり顏かほ色いろまつたく變かはりて毫すこしも力ちからなかりき 9 我われその語ものいふ聲こゑを聞きゝけるがその語ものいふ聲こゑを聞きける時とき我われは氣きを喪うしなへる狀さまにて俯伏ひれふし面かほを土つちにつけゐたりしに

10 一ひとつの手てありて我われに捫さはりければ我われ戰ふるひながら跪ひざまづきて手てをつきたるに 11 彼かれわれに言いひけるは愛あいせらるる人ひとダニエルよ我わが汝なんぢに吿つぐる言ことばを曉さとれよ汝なんぢまづ起󠄃たちあがれ我われは今いま汝なんぢの許もとに遣󠄃つかはされたるなりと彼かれがこの言ことばを我われに吿つぐる時ときに我われは戰ふるひて立たてり
 1501㌻ 
12 彼かれすなはち我われに言いひけるはダニエルよ懼おそるる勿なかれ汝なんぢが心こゝろをこめて悟さとらんとし汝なんぢの神かみの前󠄃まへに身みをなやませるその初はじめの日ひよりして汝なんぢの言ことばはすでに聽きかれたれば我われ汝なんぢの言ことばによりて來きたれり 13 然しかるにペルシヤの國くにの君きみ二十一日にちの間あひだわが前󠄃まへに立たち塞ふさがりけるが長をさたる君きみの一いつなるミカエル來きたりて我われを助たすけたれば我われ勝󠄃かち留のこりてペルシヤの王等わうたちの傍かたはらにをる 14 我われは末すゑの日ひに汝なんぢの民たみに臨のぞまんとするところの事ことを汝なんぢに曉さとらせんとて來きたれりまた後のちの日ひに關かゝはる所󠄃ところの異象まぼろしありと 15 かれ是等これらの言ことばを我われに宣のべたる時ときに我われは面かほを土つちにつけて居をり辭ことばを措おくところ無なかりしが 16 人ひとの子このごとき者ものわが唇くちびるに捫さはりければ我われすなはち口くちを開ひらきわが前󠄃まへに立たてる者ものに陳のべて言いへり我わが主しゆよこの示現じげんによりて我われは畏怖おそれにたへず全󠄃まつたく力ちからを失うしなへり 17 此このわが主しゆの僕しもべいかでか此このわが主しゆと語ものいふことを得えんとその時ときは我われまつたく力ちからを失うしなひて氣息いきも止とまらんばかりなりしが

18 人ひとの形かたちのごとき者ものふたゝび我われに捫さはり我われに力ちからをつけて 19 言いひけるは愛あいせらるる人ひとよ懼おそるる勿なかれ安やすんぜよ心こゝろ强つよかれ心こゝろ强つよかれと斯かくわれに言いひければ我われ力ちからづきて曰いへり我わが主しゆよ語かたりたまへ汝なんぢわれに力ちからをつけたまへりと 20 彼かれわれに言いひけるは汝なんぢは我わが何なにのために汝なんぢに臨のぞめるかを知しるや我われ今いままた歸かへりゆきてペルシヤの君きみと戰たゝかはんとす我わが出行いでゆかん後のちにギリシヤの君きみきたらん 21 但たゞし我われまづ眞󠄃實まことの書ふみに記しるされたる所󠄃ところを汝なんぢに示しめすべし我われを助たすけて彼かれらに敵あたる者ものは汝なんぢらの君きみミカエルのみ

第11章

1 我われはまたメデア人びとダリヨスの元年はじめのとしにかれを助たすけ彼かれに力ちからをそへたる事ことありしなり 2 我われいま眞󠄃實まことを汝なんぢに示しめさん視みよ此この後のちペルシヤに三人にんの王わう興おこらんその第だい四の者ものは富とめること一切すべての者ものに勝󠄃まさりその富强ふきやうの大おほいなるを恃たのみて一切すべてを激發ひきおこしてギリシヤの國くにを攻せめん〘1150㌻〙 3 また一箇ひとりの强つよき王わうおこり大おほいなる威󠄂權ゐけんを振ふるふて世よを治をさめその意こゝろのままに事ことを爲なさん
 1502㌻ 
4 但たゞし彼かれの正まさに旺盛󠄃さかんなる時ときにその國くには破裂はれつして天てんの四方しはうに分󠄃わかれん其それは彼かれの兒孫じそんに歸きせず又󠄂またかれの振ふるひしほどの威󠄂權ゐけんあらず即すなはち彼かれの國くには拔ぬきとられて是等これらの外ほかなる者等ものどもに歸きせん

5 南みなみの王わうは强つよからん然されどその大臣だいじんの一人ひとりこれに逾こえて强つよくなり威󠄂權ゐけんを振ふるはんその威󠄂權ゐけんは大おほいなる威󠄂權ゐけんなるべし 6 年としを經へて後のち彼等かれら相あひ結むすばん即すなはち南みなみの王わうの女子むすめ北きたの王わうに適󠄄ゆきて和好よしみを圖󠄃はからん然されどその腕うでには力ちからなしまたその王わうおよびその腕うでは立たつことを得えじこの女をんなとこれを導󠄃みちびける者ものとこれを生うませたる者ものとこれに力ちからをつけたる者ものはみな時ときにおよびて付わたされん

7 斯かくて後のちこの女をんなの根ねより出いでたる芽め興おこりて之これに代かはり北きたの王わうの軍勢ぐんぜいにむかひて來きたりこれが城󠄃しろに打うちいりて之これを攻せめて勝󠄃かちを得え 8 之これが神々かみ〴〵鑄像󠄃しゆざうおよび金銀きんぎんの貴たふとき器具󠄄うつはものをエジプトに携たづさへさらん彼かれは北きたの王わうの上うへに立たちて年としを重かさねん 9 彼かれ南みなみの王わうの國くにに打うち入いることあらん然されど自己おのれの國くにに退󠄃しりぞくべし

10 その子等こらまた憤激ふんげきして許多あまたの大軍たいぐんを聚あつめ進󠄃すゝみきたり溢󠄃あふれて往󠄃來ゆききしその城󠄃しろまで攻寄せめよせん 11 是こゝにおいて南みなみの王わう大おほいに怒いかり出いできたりて北きたの王わうと戰たゝかふべし彼かれ大軍たいぐんを興おこしてこれに當あたらん然しかれどもその軍兵ぐんぴやうはこれが手てに付わたされん 12 大軍たいぐんすなはち興おこりて彼かれ心こゝろに高たかぶり數󠄄すう萬人まんにんを仆たふさん然しかれどもその勢力ちからはこれがために增まさじ 13 また北きたの王わうは退󠄃しりぞきて初はじめよりも大おほいなる軍兵ぐんぴやうを興おこし或ある時ときすなはち或ある年數󠄄ねんすうを經へて後のちかならず大兵たいへいを率󠄃ひきゐ莫大ばくだいの輜重しちやうを備そなへて攻せめ來きたらん 14 是この時ときにあたりて衆多おほくの者もの興おこりて南みなみの王わうに敵てきせん又󠄂またなんぢの民たみの中うちの奸惡人ねじけびと等らみづから高たかぶりて事ことを爲なしつひに預言よげんをして應おうぜしめん即すなはち彼かれらは自みづから仆たふるべし 15 茲こゝに北きたの王わう襲󠄂おそひきたり壘るゐを築きづきて堅かたき城󠄃まちを攻せめおとさん南みなみの王わうの腕うではこれに當あたることを得えじ又󠄂またその撰えら拔ぬきの民たみもこれに當あたる力ちからなかるべし 16 之これに攻せめきたる者ものはその意こゝろに任まかせて事ことをなさんその前󠄃まへに立たつことを得うる者ものなかるべし彼かれは美うるはしき地ちに到いたらんその地ちはこれがために荒あらさるべし
 1503㌻ 
17 彼かれその全󠄃國ぜんこくの力ちからを盡つくして打うち入いらんとその面かほをこれに向むくべけれどまたこれと和好やはらぎをなして婦󠄃人ふじんの女子むすめを之これに與あたへん然しかるにその婦󠄃人ふじんの女子むすめは之これがために身みを滅ほろぼすに至いたり何事なにごとをも成󠄃なすあたはす毫すこしも彼かれのために益えきする所󠄃ところなかるべし 18 彼かれまたその面かほを島々しま〴〵にむけて之これを多おほく取とらん茲こゝに一人ひとりの大將たいしやうありて彼かれが與あたへたる恥辱ちじよくを雪󠄃そゝぎその恥辱ちじよくをかれの身みに與あたへかへさん〘1151㌻〙 19 かくて彼かれその面かほを自己おのれの國くにの城󠄃々しろ〴〵に向むけん而しかして終󠄃つひに躓つまづき仆たふれて亡うせん

20 彼かれに代かはりて興おこる者ものは榮光えいくわうの國くにに人ひとを出いだして租税そぜいを征斂とりたてしめん但たゞし彼かれは忿怒いかりにも戰門たたかひにもよらずして數󠄄日すうじつの內うちに滅亡ほろびうせん 21 また之これにかはりて起󠄃おこる者ものは賤いやしまるる者ものにして國くにの尊󠄅榮そんえいこれに歸きせざらん然しかれども彼かれ不意ふいに來きたり巧言こうげんをもて國くにを獲えん 22 洪水おほみづのごとき軍勢ぐんぜいかれのために押おし流ながされて敗やぶれん契󠄅約けいやくの君きみたる者ものも然しからん 23 彼かれは之これに契󠄅約けいやくをむすびて後のち詭計いつはりを行おこなひ上のぼりきたりて僅少わづかの民たみをもて勢いきほひを得えん 24 彼かれすなはち不意ふいにきたりてその國くにの膏腴󠄂ゆたかなる處ところに攻せめいりその父󠄃ちゝもその父󠄃ちゝの父󠄃ちゝも爲なさざりしところの事ことを行おこなはん彼かれはその奪うばひたる物もの掠かすめたる物ものおよび財寳ざいはうを衆人ひと〴〵の中なかに散ちらすべし彼かれは謀略はかりごとをめぐらして堅固けんごなる城󠄃々しろ〴〵を攻取せめとるべし時ときの至いたるまで斯かくのごとくならん 25 彼かれはその勢力ちからを奮ふるひ心こゝろを勵はげまし大軍たいぐんを率󠄃ひきゐて南みなみの王わうに攻せめよせん南みなみの王わうもまた自みづから奮ふるひ甚はなはだ大おほいなる强つよき軍勢ぐんぜいをもて迎󠄃むかへ戰たゝかはん然されど謀略はかりごとをめぐらして攻せめるが故ゆゑにこれに當あたることを得えざるべし 26 すなはち彼かれの珍膳ちんぜんに與あづかり食󠄃くらふ者もの彼かれを倒たふさんその軍兵ぐんぴやう溢󠄃あふれん打うち死じにする者もの衆おほかるべし 27 此この二人ふたりの王わうは害󠄅がいをなさんと心こゝろにはかり同どう席せきに共ともに食󠄃しよくして詭計いつはりを言いはん然されどもその志こころざしならざるべし定さだまれる時ときのいたる迄までは其その事こと終󠄃をはらじ 28 彼かれは莫大ばくだいの財寳ざいはうをもちて自己おのれの國くにに歸かへらん彼かれは聖󠄃せい約やくに敵てきする心こゝろを懷いだきて事ことをなし而しかしてその國くににかへらん
 1504㌻ 
29 定さだまれる時ときにいたりて彼かれまた進󠄃すゝみて南みなみに到いたらん然されど後のちの模樣ありさまは先さきの模樣ありさまのごとくならざらん 30 即すなはちキツテムの船󠄄ふねかれに到いたるべければ彼かれ力ちからをおとして還󠄃かへり聖󠄃せい約やくにむかひて忿怒いかりをもらして事ことをなさん而しかして彼かれ歸かへりゆき聖󠄃せい約やくを棄すつる者ものと相謀あひはからん 31 彼かれより腕うでおこりて聖󠄃所󠄃きよきところすなはち堅かたき城󠄃しろを汚けがし常供じやうくの物ものを撤とり除のぞかせかつ殘暴あらす可惡にくむべき者ものを立たてん 32 彼かれはまた契󠄅約けいやくに關つきて罪つみを獲うる者等ものどもを巧言かうげんをもて引誘そそのかして背そむかせん然されどその神かみを知しる人々ひと〴〵は力ちからありて事ことをなさん 33 民たみの中うちの頴悟さとき者ものども衆多おほくの人ひとを敎をしふるあらん然さりながら彼かれらは暫時しばらくの間あひだ刃󠄃やいばにかかり火ひにやかれ擄とらはれ掠かすめられ等などして仆たふれん 34 その仆たふるる時ときにあたりて彼かれらは少すこしく扶助たすけを獲えん又󠄂また衆多おほくの人ひと詐いつはりて彼かれらに合がつせん 35 また頴悟さとき者等ものどもの中うちにも仆たふるる者ものあらん斯かくのごとく彼かれらの中うちに試こゝろむる事こと淨きよむる事こと潔󠄄いさぎよくする事ことおこなはれて終󠄃をはりの時ときにいたらん即すなはち定さだまれる時ときまで然しかるべし〘1152㌻〙

36 此この王わうその意こゝろのままに事ことをおこなひ萬よろづの神かみに逾こえて自己おのれを高たかくし自己おのれを大おほいにし神々かみ〴〵の神かみたる者ものにむかひて大言たいげんを吐はき等などして忿怒いかりの息やむ時ときまでその志こころざしを得えん其そはその定さだまれるところの事こと成󠄃なさざるべからざればなり 37 彼かれはその先祖せんぞの神々かみ〴〵を顧󠄃かへりみず婦󠄃女をんなの愉快たのしきを思おもはずまた何なにの神かみをも顧󠄃かへりみざらん其そは彼かれ一切すべてに逾こえて自己おのれを大おほいにすればなり 38 彼かれは之これの代かはりに軍いくさ神がみを崇あがめ金銀きんぎん珠玉しゆぎよくおよび寳物はうもつをもてその先祖せんぞ等たちの識しらざりし神かみを崇あがめん 39 彼かれはこの異邦󠄆ことぐにの神かみに由より要󠄃害󠄅えうがいの城󠄃々しろ〴〵にむかひて事ことを爲なさん凡すべて彼かれを尊󠄅たふとぶ者ものには彼かれ加くはふるに榮さかえを以もてし之これをして衆多おほくの人ひとを治をさめしめ土地くにをこれに分󠄃わかち與あたへて賞賜たまものとせん

40 終󠄃をはりの時ときにいたりて南みなみの王わう彼かれと戰たゝかはん北きたの王わうは車くるまと馬むまと衆多おほくの船󠄄ふねをもて大風おほかぜのごとく之これに攻寄せめよせ國くにに打うちいりて潮うしほのごとく溢󠄃あふれ渉わたらん
 1505㌻ 
41 彼かれはまた美うるはしき國くにに進󠄃すゝみ入いらん彼かれのために亡ほろぶる者もの多おほかるべし然されどエドム、モアブ、アンモン人びとの中うちの第一だいいちなる者ものなどは彼かれの手てを免まぬかれん 42 彼かれ國々くに〴〵にその手てを伸のばさんエジプトの地ちも免まぬかれがたし 43 彼かれは遂󠄅つひにエジプトの金銀きんぎん財寳ざいはうを手てに入いれんリブア人びととエテオピア人びとは彼かれの後うしろに從したがはん 44 彼かれ東ひがしと北きたより報知しらせを得えて周󠄃章あはてふためき許多あまたの人ひとを滅ほろぼし絕たゝんと大おほいに忿いかりて出いでゆかん 45 彼かれは海うみの間あひだにおいて美うるはしき聖󠄃山せいざんに天てん幕まくの宮殿みやをしつらはん然されど彼かれつひにその終󠄃をはりにいたらん之これを助たすくる者ものなかるべし

第12章

1 その時とき汝なんぢの民たみの人々ひと〴〵のために立たつところの大おほいなる君きみミカエル起󠄃たちあがらん是これ艱難なやみの時ときなり國くにありてより以來このかたその時ときにいたるまで斯かゝる艱難なやみありし事ことなかるべしその時とき汝なんぢの民たみは救すくはれん即すなはち書ふみにしるされたる者ものはみな救すくはれん 2 また地ちの下したに睡ねむりをる者ものの中うち衆多おほくの者もの目めを醒さまさんその中うち永生かぎりなきいのちを得うる者ものありまた恥辱ちじよくを蒙かうむりて限かぎりなく羞はづる者ものあるべし 3 頴悟さとき者ものは空󠄃そらの光輝かがやきのごとくに耀󠄃かがやかんまた衆多おほくの人ひとを義ただしきに導󠄃みちびける者ものは星ほしのごとくなりて永遠󠄄えいゑんにいたらん 4 ダニエルよ終󠄃末をはりの時ときまで此この言ことばを秘ひし此この書ふみを封ふうじおけ衆多おほくの者もの跋ゆき渉わたらん而しかして知識ちしき增ますべしと

5 茲こゝに我われダニエル觀みしに別ほかにまた二箇ふたりの者ものありて一箇ひとりは河かはの此旁こなたの岸きしにあり一箇ひとりは河かはの彼旁かなたの岸きしにありけるが 6 その一箇ひとりの者ものかの布ぬのの衣ころもを衣きて河かはの水みづの上うへに立たてる人ひとにむかひて言いへり此この奇跡きせきは何いづれの時ときにいたりて終󠄃をはるべきやと 7 我われ聞きくにかの布ぬのの衣ころもを衣きて河かはの水みづの上うへに立たてる人ひと天てんにむかひてその右みぎの手てと左さの手てを擧あげ永久とこしなへに生いける者ものを指さして誓ちかひて言いへりその間あひだは一時ひとときと二時ふたときと半󠄃時はんときなり聖󠄃きよき民たみの手ての碎くだくること終󠄃をはらん時ときに是等これらの事ことみな終󠄃をはるべしと〘1153㌻〙 8 我われ聞きゝたれども曉さとることを得えざりき我われまた言いへりわが主しゆよ是等これらの事ことの終󠄃をはりは何なんぞやと
 1506㌻ 
9 彼かれいひけるはダニエルよ往󠄃ゆけ此この言ことばは終󠄃極をはりの時ときまで秘ひしかつ封ふうじ置おかるべし 10 衆多おほくの者もの淨きよめられ潔󠄄いさぎよくせられ試こゝろみられん然されど惡あしき者ものは惡あしき事ことを行おこなはん惡あしき者ものは一人ひとりも曉さとること無なかるべし然されど頴悟さとき者ものは曉さとるべし 11 常供じやうくの者ものを除のぞき殘暴あらす可惡にくむべき者ものを立たてん時ときよりして一千せん二百ひやく九十日にちあらん 12 待まちをりて一千せん三百びやく三十五日にちに至いたる者ものは幸福さいはひなり 13 汝なんぢ終󠄃をはりに進󠄃すゝみ行ゆけ汝なんぢは安息やすみに入いり日ひの終󠄃をはりに至いたり起󠄃たちて汝なんぢの分󠄃ぶんを享うけん〘1154㌻〙
 1507㌻